「不思議の国のアリス症候群」という一種の病気がある。これは子供の頃などによく起こるもので、大きさの感覚がおかしくなり普段小さいものが巨大に思えたり、大きなものが小さく見えたりするというものだ。子供時代、風邪で熱を出して寝込んでいるときに何か感覚が変になったように思えることがなかっただろうか?頭上にある電気がやけに大きく見えるとか、自分が布団の中で小さくなってしまったような感じがするとか。この現象はそういう、大きさや距離の感覚がおかしくなる状態のことで、子供の頃にこれを体験する人は意外と多い。

変わった名前に思えるが、これはルイス・キャロル作の「不思議の国のアリス」に基づいたもので、れっきとした医学用語である。この症状が起こる原因は、ある種のウイルス感染と考えられていてほとんどは子供の頃だけのものだが、一部大人になってからもこの症状が続く人がいる。

他にも、身体的症状が感覚を狂わせる病気に「むずむず脚症候群」がある。こちらは、横になっているときに主に脚や爪先に、むずむずとした奇妙な感覚が起こる症状だ。この症状を持つ人は、何かが脚の上で動いているような妙な感じがするので思わず脚を動かしてしまう。さらに、人によっては痛みを伴ったり、まるで誰かに触られているように感じることもあるという。詳しい原因はまだ分かっていないが、睡眠に影響することもあり無視できない病気である。

いわゆる「怪奇体験」には何か不思議な感覚を経験することが多いが、例えばこういった症状はそうと知らなければ不思議体験とも思えてしまう。病院で働いていて、頻繁に怪奇体験をしていた看護師が転職してしまったという話をよく聞く。しかし、怪奇体験は実際は医学的に認められている状態であり、怪奇でも何でもないことなのである。